肺がん手術(外科治療)は、術前検査、麻酔、病巣の切除という流れで行われます。肺がん手術の流れを知る事も大切です
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肺がん初期症状肺がん初期症状

肺がん手術の流れ

1.術前検査

医者肺がんの手術を行う際には、一般的に、胸部CT、胸部Ⅹ線、採血検査、心電図などの生理学的検査など、術前検査を行います。検査の種類によっては、肺がんかどうかを検査した際のデー夕を流用することもあります。肺がんの病状や進行状態また、一般的な検査で異常が発見された場合には、さらに詳しく検査をすることもあります。病状や進行の度合いによって行う特殊検査には、MRIやガリウムシンチグラフィーなどがあります。一般的な検査で異常が見つかった場合は、どの検査で異常が出たかによって、再検査の種類が異なってきます。たとえば、心電図に異常が見つかった場合は、循環器の専門医による心エコー、負荷心電図、心筋シンチグラフィー、心臓カテーテルが行われることがあります。呼吸機能が衰え、手術に耐えられるかどうか判断が難しい場合は、換気・血流シンチグラフイー、胸部CTによる残肺呼吸機能の評価などが行われます。また、肺がんに加えて、高血圧症や肝硬変、糖尿病などの併存症がある場合は、食事療法や治療薬による術前のコントロールが必要になります。そのため、それぞれの併存症によって、必要な検査が追加されることもあります。

肺がん手術は、禁煙が絶対条件です。最低でも術前3週間は禁煙が必要です。喫煙者は、術後に痰が多く、その痰が気管支に詰まったり、感染症の原因になることで肺炎などの合併症の発生率が明らかに高くなる為です。

2.麻酔

麻酔は全身麻酔になり、気管支から麻酔を吸い込む吸入麻酔が使われます。最近は、手術操作を容易にするために【分離肺換気】という方法が用いられることが多くなっています。これは、全身麻酔を行う際、特殊な挿管チューブを使い、左右の肺を分け、それぞれ独立して換気する方法です。たとえば、右肺を手術する場合は、手術中、右肺の換気を止め、左肺のみによる片肺換気を行います。換気を止めることにより、右肺は虚脱した状態になることで、手術がきわめてスムーズに行いやすくなるのです。

3.病巣の切除

肺がん切除手術は、①開胸、②開胸診断、⑨肺葉切除、④リンパ節郭活、⑤閉胸、の5つのプロセスに分けられます。

①開胸

肺を切除するためには、肺が収められている胸腔に入らなければなりません。そのために行うのがで【開胸】です。肺の切除には、通常、【後側方開胸】という開胸法が使われます。まず、側胸部の皮膚を肋骨に沿って15~20cm程度切開します。次に広背筋と肋間筋という筋肉を切断します。このとき、通常、前鋸筋は温存されます。そして、第6肋骨の上線、つまり第5肋間のすき間から壁側胸膜を破り、胸腔内に入ります。肺切除の際、十分な視野を確保するために、第6肋骨の後方を約1.5cm切除しますが、これによって、手術後、胸郭の変形などがおこる心配はありません。

②開胸診断

開胸したら、すぐに肺がんの進展状況を視診と触診で確認し、切除が可能かどうかを最終的に決定します。具体的には、肺がん原発巣の部位の確認、周囲の臓器への浸潤の有無や程度、胸膜播腺や悪性胸水の有無、リンパ節転移の有無などをチェックします。最近では胸腔鏡を用いることで、これらの胸腔内診断が可能になってきています。そこで、国立がんセンターでは、麻酔をかけ、胸腔鏡を用いて肺がんの進展状況を視診したのち、実際の開胸術を行うようにしています。

③肺葉切除

切除の最終確認が済むと、肺葉の切除に入ります。切除する肺葉がどこかによって、多少、手順は前後しますが、一般的には以下のような方法になります。肺がんの手術は、悪性腫瘍に対する手術ですから、術中の操作に伴って、腫瘍細胞が全身に広がるのを避けなければなりません。そこで、一般的に、まず血流の出口である肺静脈を結紫(血管を縛ること)してから、切り離します。次に肺動脈を切り離します。血管の切り離しは、糸による結紫、または自動縫合器などが用いられます。また、分乗不全といって、肺の各葉がスムーズに分離できないときは、自動縫合器を使って葉間を分け、空気漏れを防ぎます。最後に上乗気管支を自動縫合器で切り離し、上乗切除は完了します。

④リンパ節郭清

リンパ節の郭清を、行います。郭清が必要な部位は、肺がんの原発巣がどこにあるかによって異なってきますが、肺門部分にあるリンパ節は、肺葉切除と一緒にほとんど完了しているので、実際には葉間にあるリンパ節をさらに摘出する程度で済みます。この段階での切除の中心になるのは、縦隔にあるリンパ節です。上乗切除の場合、摘出されるのは、気管と上大静脈に挟まれた部分の脂肪組織に埋もれている「上縦隔リンパ節」と、右主気管支から気管分岐部にある「気管分岐部リンパ節」になります。この2つのリンパ節をそれぞれひと固まりにして摘出していきます。リンパ節郭清の手技は、主に電気メスを用いて行われます。

⑤閉胸

肺がん手術の写真すべての胸腔内の操作が完了したあと、止血を確認します。その後、閉胸の手技に入ります。一般的には、胸腔ドレーン(細い管)を1~2本、残した状態で閉じます。胸腔ドレーンには、肺をしぼませないためと、手術部からの出血やリンパ液、肺から漏れる空気が胸腔内にたまらないようにするという目的があります。通常は、空気漏れがなくなり、廃液量が少なくなるのを確認し、2~3日以内に抜き去ります。術後、3~5日は、座薬や注射の形で鎮痛薬を投与して、痛みを和らげます。また、早くからだを動かすことで十分咳をし、痰を出せるように努めることになります。

切除不能のケース

残念ながら、肺がんの病巣を切除不能で終わるケースも少なからずあります(手術予定の患者さんのうち、3~4%程)。これは、開胸診断で肺葉の切除が難しいと判断され、そのまま閉胸してしまうケースです。事前に念入りに検査していたにもかかわらず、なぜ開胸してから、切除不能という事態になるかといえば、次のような原因が考えられます。ひとつは、肺がんが予想以上に進行していた場合、もうひとつは、技術的に切除が困難と判断された場合です。ただ、実際にはどちらかひとつが切除不能の原因になるというより、両者が重なったことで、手術を中止する場合のほうが多くなります。

胸膜播腺やがん性胸膜炎のような悪性胸水の貯留が認められ、切除不能になるケースが一番多い

これらは、がん細胞が肺からこぼれ、広く胸腔内に散らばっている状態ですから、本来であれば、外科治療の対象にはなりません。しかし、いずれの症状も、術前のCTではとらえにくいものです。胸水も量が多ければ、CTに写るのですが、少量の胸水は、正常な場合でも認められるので、なかなか判断がつきません。そのため、開胸して初めて存在がわかり、切除を断念するという事態になってしまう事があります。

がんがほかの臓器にまで浸潤している場合、切除可能かどうか、開胸してみないと分からないケースあります

一例が、心臓の左房に浸潤している場合です。ここまでがん細胞が広がっていると、切除が非常に難しいため、断念することが多くなってしまいます。さらに、切除不能かどうかには、患者さんの肺機能が影響することもあります。たとえば、高齢者にしばしばみられるのが、全摘出は機能的に無理でも、上乗切除には耐えられそうなケースです。この場合、がん細胞の広がりが上乗切除で済むものなのか、全摘出をしなければならないほど広がっているのかどうかは、実際に開胸してみないと分かりません。その結果、全摘出でなければ、がん細胞が切除できないと判断された場合、肺機能を優先し、切除を取りやめることになります。

減量手術は行わないのが原則

また、肺がんの外科治療の場合、基本的にがん病巣の一部を切除しても、予後の改善はあまり期待できません。むしろ、切除したことによるリスクのみ残ってしまいます。たとえば、肺の機能が衰え、術後の生活の質が低下する、といった悪影響が出る可能性のほうが高くなってしまうからです。ですから、原発巣が多量の血痕や喀血などを引きおこし、ほおっておくと、その症状が原因で命にかかわる場合でない限り、がんの一部を切除する「減量手術」は行わないことのほうが多いのです。

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